USDをJPYに両替する際の一般的なテクニック
人生をやっていると、何がしかの理由で米ドル (USD) の現物を持ってしまうことがあります。日本で生きていくためには日本円 (JPY) が必要なので円転しないといけませんが、可能な限りお得に変換するにはどうしたら良いでしょうか。2022年の現状を調べてみました。
前提
USDをJPYに変える際、主に為替レートに上乗せされる手数料(為替手数料)がかかります。これは各会社で異なっており、これが安いほど有利になります。例えば手数料が1USDにつき1JPYとします。市場のレートが1USD=140.0JPYだった場合、USDからJPYに変える際には139.0円で計算され、1JPY損します。たった1円、0.7%と思うかもしれませんが、額が増えるほど影響が無視できなくなってきます。1万USD(約143万円)の交換では1万円の手数料、10万USD(約1,430万円)なら10万円……と比例して手数料が増えてしまいます。
他に考慮すべき点として、他の口座にドルを移す際の手数料があります。つまり、お得な処理をするために移動させると沢山手数料がかかって元も子もないことがあります。主に送金手数料、受取手数料、コルレスチャージ、リフティングチャージが4大手数料です。
送金手数料は、名前の通りUSDを送金する側で請求する手数料です。受取手数料も、受け取る側でかかるだけで分かりやすいですね。コルレスチャージは厄介で、送金の際に経由した銀行によって手数料が異なります。外貨に強い銀行はコルレス契約を色々なところと結んでいるので、他の銀行を経由せずコルレスチャージもかからないことが多いです。これは送ってみないと分からないので、口コミを探したりして見極めましょう。おそらく国内間のUSD送金ではかからないはずです。リフティングチャージも送金手数料の一種ですが、同一通貨を送る際にかかる手数料です。USDを送ってUSDで受け取る際、銀行側は為替手数料が発生せず旨味がありません。そのため、このような名前で手数料を掠め取っていくわけですね。
これらを踏まえ、今回は国内口座に既にUSDがある前提で調べてみます。
一番楽な方法 - 銀行での両替
楽な方法は得てして損ですが、ニッチなケースもあるので見てゆきましょう。
最も簡単な方法は、USDが入っている銀行口座の両替サービスを使うことです。例えば、SBI銀行では6銭の手数料で外貨両替ができます。円に両替した場合は、そのまま円として扱うことができます。もちろん他の銀行に出金したり、クレカの支払いをしたりできます。
仮に大手銀行や外貨に力を入れていない銀行を使う場合、このコストは爆上がりします。大手である三井住友は50銭、三菱UFJは25銭です。楽天銀行では25銭、auじぶん銀行は外貨→円は片道25銭となっている模様です。
この方法でネット銀行からお得なものを選ぶなら、先に挙げたSBI銀行の6銭、新生銀行は7-15銭(ランクあり)、ソニー銀行は4-15銭(ランクあり)です。新生銀行で7銭にするには年間平均の判定が必要で何か月かの時間がかかります。
ソニー銀行の4銭は月末の判定で翌々月の施行なので、上手くいけば2か月強のリードタイムで済みます。また、ついでに2%キャッシュバックのデビットカードが付いてきます。条件は外貨や投資信託で1,000万円以上置いていれば良く、定期預金の利率もそこまで悪くないので今回のケースと噛み合いますが、他の運用方法の方が利益が出るかは総合的に考えましょう。
なお、ソニー銀行や新生銀行はコルレスチャージ、リフティングチャージなど余計な手数料が付きにくい銀行なので、外貨受け取りの鉄板として扱われています。ランクによって外貨送金手数料も無料になったりと、総合的な外貨処理のお得度が高い銀行です。
ここまでは昨今のネット銀行に軍配が上がりそうな感じでしたが、外貨に強いという点では大手に分があります。今まで発見した中で最もお得なのは、SMBC信託銀行(プレスティア)のクロスカレンシー取引です。そもそもプレスティアはシティバンクの名前変更なので、外貨に強いです。「1件の取引金額が100万円相当額以上の場合、またはプレスティアゴールドのお客さまは、為替手数料を割引。」と記載されており、なんと外貨から円の為替手数料が0円になります。活用すればかなりお得にできそうです。
ただし、プレスティアでは残高がないと口座維持手数料がかかったり、受け取り手数料無料に5,000USD/日の制限があったり、国内宛外貨送金は必ず4,000円/件かかるなど、ステータスでも回避できない手数料がかかります。扱いの難しい口座なので、こちらも総合的に判断する必要がありそうです。
ここまでのまとめ
2022年時点では、プレスティアが0円で最もお得です。しかし、5,000USD/日を超えると外貨入金で手数料がかかるので、額が増えると一生入金し続ける羽目になります。そもそも額が小さいならどれを使っても大差ないので、利便性が微妙です。
次いでソニー銀行のプラチナステータス(4銭)、SBI銀行の6銭、新生銀行の7銭と続きます。これらは候補に入ってくるでしょう。
なお、4銭の場合は大体1万USD(約143万円)だと400円、10万USD(約1,430万円)だと4,000円です。
割と楽な方法 - 外貨変換アプリの利用
海外送金や外貨決済を提供しているアプリの中にも、比較的お得な方法があります。
有名どころでは、海外送金に便利なWise(旧Transferwise)があります。これは通貨の変換をした上で海外口座⇄国内口座に入金する、という便利なものです。為替手数料は無視できる範囲に収まっており、透明性を重視しています。一方で、今回は国内にUSDがあるのと、USDJPYの変換では手数料が0.41%かかります。1USDにつき約59銭と、変換するだけにはかなり高い手数料です。
他の有名どころとして、他通貨対応決済アプリのRevolutがあります。自分のアカウントで確認したところ、ドルを入金する術が無く今回の対象には使えなさそうでしたが、一応仕様を記載しておきます。
Revolutはサブスクリプションで優遇内容が分かれています。無料会員でも為替手数料はありませんが、750,000円/月を超えると0.5%と大きな手数料がかかってしまいます。プレミアム会員の月額980円でこの制限は無くなるので、利用できるかもしれません。
海外送金に手数料がかかるようになったなど改悪はありますが、上手く使えば使い道がありそうです。
本命 - FX業者の利用
外貨を扱うといえばFX業者です。証券会社や銀行より遥かに狭いスプレッドを提供しています。また、基本的にリアルタイムに実勢レートに追従しているため、変な価格で交換させられることは少ないです。
これを利用して通貨の交換を行う場合、現引(現受け)・現渡という制度を利用します。FXでの意味は、現引が日本円から外貨に変換して受け取ること、現渡が外貨から日本円にして受け取ることです。分かりやすく両替という名前が付いていることもあります。海外用に現金が必要な場合、現引をして空港で受け取ったりもできます。まとまった額が必要な場合、空港の両替所より遥かに良いレートなので便利です。昨今ではカードが使えることが多く、現金需要も減りましたが、国によっては有効な手段になりそうです。
さて、今回は現渡をしたいのですが、これに関わる手数料はスプレッドと各種手数料です。業者によってバラバラなので、主要な業者でまとめてみました。注意点として、USDを入金できる業者でないと、今回の目的に適わないため除外しています。
業者名 | ドル円公称スプレッド | 手数料 |
---|---|---|
外貨ex by GMO | 0.2銭 | − |
セントラル短資FX | 0.2銭 | 10銭 |
Money Partners | 0.3銭 | 10銭 |
マネックスFX Plus | 0.2銭 | 20銭 |
スプレッドは団子で公称値なのであまり考慮に入れなくて良さそうですが、注目すべきは手数料です。現渡は多くの業者で手数料が取られてしまい、この手数料ならSBI銀行などで行った方がマシです。この中で、唯一外貨exだけが手数料を取られません。さらに、最低単位が1,000通貨からと扱いやすい単位となっています。
0.2銭のスプレッドとは
一応スプレッドで発生する損失についても見てゆきましょう。簡単に言い換えると、1USDを交換するのに0.2銭かかるということになります。額が小さすぎて分かりにくいですが、500ドルで1円かかります。
大体1万USD(約143万円)だと20円、10万USD(約1,430万円)だと200円、100万USD(約1.43億円)でも2,000円です。安い!
まとめ
ということで、2022年時点では外貨exにUSDを送って現渡するのが、利便性も高くお得な方法だと考えられます。もし外貨送金手数料の方がかかる場合や、そもそも額が小さい場合は、入っている銀行で両替しましょう。最初からSBI銀行、ソニー銀行、新生銀行などで受け取れば、比較的お得に円転が可能です。ソニー銀行、新生銀行は外貨受け取りのしやすい銀行なので、上手くランクを上げられれば外貨送金や円転でも使いやすいでしょう。
実際にやってみた
外貨送金無料を利用してソニー銀行から外貨exに送り、円転をしてみました。結果として指値をしたレートで円になり、日本円で銀行に出金されました。ここまで一切手数料を取られることは無く、綺麗に指値をした値で両替ができています。スッキリ。